最近読んだ小説

 北杜夫の「夜と霧の隅で」と三浦哲郎の「忍ぶ川」を読みました。前者はナチス時代の夜と霧作戦をモチーフに、流石医者の家系だけあって詳しい精神学の知識を混ぜ込んで「死」について書いてます。しかし、その後の展開(「どくとるマンボウ漂流記」など)からもわかりますが、やはり娯楽性が強い気がしますね。文章もあんまり上手くないです(俺にそんなこと言われて杜夫さんかわいそうw)。後者は素晴らしかったです。美しい。同じく川がつくのは偶然ですが、宮本輝の「蛍川」にも見られるような日本的な美しさ、女性を描き、風景描写を巧みに織り交ぜていました。その仕上がった「忍ぶ川」とい名の錦繍は、まさしく純文学でした。ああいう小説は書こうと思っては書けないんでしょうね。俺が驚愕した「日蝕」は最高峰に高いレベルの文章で書かれた小説であっても「書けない」小説ではない気がします。「忍ぶ川」は私小説であり、真直ぐで、でも完全に創作された小説。どちらも目指すべきものです。
 まあ、偶然でしたが第43回芥川賞が「夜と霧の隅で」で、第44回芥川賞が「忍ぶ川」です。まったく毛色の違う作品が連なって受賞するというのも面白いと感じましたね。ブックオフで希望は100円コーナー、まあ普通の値段も辞さないという思いで池澤夏樹の「スティルライフ」探してますが、ないんですよねえ・・・あの作家さんは面白いですよね。お父さんが福永武彦。娘なんて声優の池澤春菜ですよw父が夏樹で娘が春菜・・・安直だなあ^^。