69という年

 最近、庄司薫の「赤頭巾ちゃん気をつけて」を読んだのですが、その前には高野悦子の「二十歳の原点」を読んでたんです。偶然なんですがね。なんせ、読むまでどちらも安保時代の作品だと知らなかったんです。他に69・70安保の頃の小説といえば春樹作品か、村上龍の「69」とかです。あと、三田誠広の「僕って何」とかね。なんつうか、あの時代の学生の感受したものを文章化すると、同じことをしてても格段に文学的になって羨ましいです。
 奔放の中の空っぽを金原ひとみが描いたり、現代の病理性を阿部和重が描いたりしてもすごくサーフィス(上っ面)にしか見えない。深いものを描いているように見えて、それをこれ見よがしに押し出しているから醜悪だ。そう思うのです。かといって、辻仁成舞城王太郎白岩玄のようなライトな文体・内容の作品も見たままに薄っぺらい。ではなく、軽薄な表層の膜を描きながらもその下にある深遠などろりと濃厚な液体を見せる文章というものが必要な気がする。中沢けいが17で群像新人賞を取った時の「海を感じる時」のように、ストレートながら瑞々しく描き出し、深奥の震えを描き出すという手法もあるのですが、それは女性作家に多いように思います。例えば今なら島本理生とかね。
 とにかく最近は安保について勉強したい気分です。今の時代の青年が安保時代の学生に憧れるという設定の小説も書いてみたいものです。

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